気鋭アーティスト 舘鼻則孝にとっての“リ・シンク”するものづくりとは?

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メトロポリタン美術館など世界で展示される代表作「ヒールレスシューズ」を始め、日本の伝統的な文化や技法をバックボーンに持つ作品を送り出すアーティスト舘鼻則孝。『JT Rethink PROJECT』とのコラボレーションで8月12日から20日まで開催した<舘鼻則孝 リ・シンク展>には、前述の「ヒールレスシューズ」をはじめ、七宝文様を扱った絵画や彫刻、人形浄瑠璃の舞台の再現など“伝統・文化をRethinkする”世界観が立体的に一望できる展示が実現。今回はプロジェクトの概念に共鳴する氏自身の“Rethink観”とは何かをインタビューし、現代の私たちの生活でも参照できるメッセージもお聞きしました。

舘鼻則孝。アーティスト。

まずは今回のリ・シンク展を開催することになった経緯を教えていただけますか?

普段から僕の創作活動の中ではリ・シンクという概念は重要なところだと思っていて、この言葉でパッケージしました。今回の展覧会に関して言えばサポートしていただいているJTのRethink PROJECTとそういう部分が共鳴して出来上がったという気がしています。

クリエーションにおいて「“Rethink”する(視点を変えて考える)」というのはどのようなことなのでしょうか?

僕のようにモノを生み出したり、発信したりする立場の人間の場合、基本的に前を向くのですが、今まで積み重ねられた日本の歴史や文化の変遷を捉えることによって、より未来が明確になるということは往々にしてあり得るのではないかと思っています。ただ単純にモノを生み出す時に誰も見たことのない新しいものを生み出そうという感覚ではなく、“今まで積み重ねられてきたものの延長線上にどういうものを生み出していくか”、が重要になってくるので、例えばビジュアルに固執してしまうと逆に背景がないと思うのです。なぜこのモノを生み出したのか、なぜこの時代に必要なのかが、置き去りになってしまう部分が多い気がしています。

舘鼻則孝 リ・シンク展。

伝統的なものに対してリ・シンクするきっかけはいつだったのですか?

大学の卒業制作がちょうど「ヒールレスシューズ」を作ったタイミングで、それが一番大きなモノとしてアウトプットができたタイミングだと思っています。もとをただしていくと、僕は西洋への憧れがあったので、世界で活躍するファッションデザイナーになりたくてヨーロッパに留学して勉強しようと考えていました。でもその自分の姿を想像すると、周りの人たちはみんな外国人である一方、彼らにしたら僕が外国人で、日本からわざわざ勉強しにきているという立場だと思うのですが、そこで僕はなぜ日本人なのに海外の文化を勉強しに行くのだろうか、と思ってしまったのです。じゃあ自分の武器になるものはなんなんだ、ということを考えた時に、日本にもしっかり文化はあるということを感じたというか、ある種日本回帰したタイミングだったんですけど、それによって自分の進むべき道っていうのはわりと明確になったような気がしたのです。

舘鼻さんが伝統的なものの中にむしろ新しさを見る理由はなんでしょう。

古いものが好きなわけではなくて、どちらかというと新しいものに憧れがあったのですが、やっぱり“自分にしか生み出せないものはなんなのか”っていうところが重要だと思ったのです。そうでなければ自分が存在する価値はないじゃないですか。それは社会的に見た時に自分という人間がどういう人間なのかということにもつながってくると思うのです。僕の場合、東京藝大では工芸科だったので、じゃあ工芸だったら工芸というものに対して根本的に見直さなければならない。昔のものを現代に当てはめようとしても、スキルアップのための自己承認欲求的な感じになってしまいがちなのですが、そういうことではなくて、僕は新しい価値観が生まれるようなものづくりがしたかったのです。そのような意味でオリジナルというか原点的なものは知らなくちゃいけないなという気はしました。

続きは以下より

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