錦鯉のような日本酒が海外のデザイン賞を総なめ!デザイナー小玉 文さんにインタビュー

新潟県に酒蔵を構える今代司酒造株式会社が製造する日本酒「錦鯉」が、イタリア最大のデザインコンペティションA’ Design Awardにて最高賞となるプラチナ賞を受賞!

日本酒「錦鯉」は、ボトル自体に日本を象徴する錦鯉がデザインされており、錦鯉の形にくり抜かれた付属のカートンに入れることで、まさしく池の中を悠然と泳いでいるかのような錦鯉を表現。
デザインは、グラフィックデザイナーの小玉 文(コダマ アヤ)さんによるもの。
力強くも優雅な佇まいは、贈答品としても最適で日本のみならず海外からの評価も高いといいます。

「生きた宝石」と称される錦鯉の海外での人気は高まる一方。
そんな錦鯉の美しさを、日本人ならではの“繊細さ”と“しとやかさ”で表現した結果の受賞ではないでしょうか。
さらに、「錦鯉」は、2015年にもDesign for Asia Awardsにてブロンズ賞を、今年に入ってからも世界的に権威あるデザイン賞のiFデザイン賞を受賞していて、まさに有名デザイン賞の総なめ状態に!

日本人としては世界で活躍してくれる日本人デザイナーがいるというのはうれしいもの。また、日本酒と錦鯉いう日本古来の文化が“正しい形”で海外に伝わっていくという部分でも非常に意義のあるものではないかと思います。
今回は、「錦鯉」のデザインを担当した小玉さんにデザインへのこだわりを聞いてみました。

「数多の失敗からの成功」デザイナー小玉 文さんにインタビュー

ー 今回の「錦鯉」をデザインすることになった経緯を教えてください。

(小玉さん)-企画の発端は「酒蔵を、そして日本を代表するような、印象的なデザインの日本酒を造ろう」ということでした。
そのために適したモチーフとして、日本で最も有名な鑑賞魚「錦鯉」を選びました。
この酒を製造している酒蔵「今代司酒造」が在る新潟県は、古くから錦鯉の養殖が盛んな土地でもありますが錦鯉をモチーフに選んだ理由はそれだけではなく、以下のようなエピソードがあります。

かつて日本酒が樽で出荷されていた時代、酒蔵は酒を酒屋に売る時に水で薄めて出荷し、酒屋も消費者に売る際にさらに水で薄めていたそうです。
金魚が泳げるほどに水で薄められた酒という揶揄を込め、世間ではそれを「金魚酒」と呼んでいました。
しかしそのような時代でも、この日本酒を作っている「今代司酒造」は薄めずに出荷していたため、酒屋から大変喜ばれたという話が伝わっています。

今代司は「金魚酒」ならず 威風堂々たる「錦鯉」

今代司酒造の在り方を体現するような、威風堂々たるお酒を造ろうということからこの企画は始まりました。

ー 「錦鯉」のデザインで特にこだわったところは?

(小玉さん)-白いの瓶の形をそのまま鯉の形に見立てて、瓶というキャンバス上に錦鯉の模様をグラフィカルに配置するというアイデアに加え箱に錦鯉のシルエットの窓を設けることで、さらに魅力的なパッケージに仕上げています。
錦鯉の模様は、毛筆で描いたようなテクスチャーで作成しました。

通常の日本酒とは差別化するため、デザインはもちろん、箱の素材にも特にこだわりました。
手触りのよい「気包紙-FS」という紙を使用し、その質感を活かすために、印刷は金の箔押しだけにしました。
白い瓶の美しさを際立たせるために、箱の内側には金箔の入った赤い紙を全面に貼っています。
白・赤・金の色の組み合わせは、この商品を華やかな印象に感じさせることに成功するとともに、他の日本酒との差別化に成功しています。

白い瓶に直接赤い模様を印刷する加工は、日本国内でも限られた印刷会社しか出来ない難しい加工です。この印刷を成功させるまでには、数多くの試作と失敗を繰り返しました
瓶のくびれた部分を含む広い面積に直接印刷するために、印刷転写シートを3分割して手作業で貼り、最後に窯で焼いて完成させるという多大な手間がかかっています。
瓶の形状そのものを鯉に見立てるために、この印刷面積の広さは必須条件でした。

ー 権威ある賞を受賞したことでさらなるステップアップになるかと思いますが、今後の展望は?

(小玉さん)-「良いデザインは、言語を超越して人の心を動かすものだ」と考えて仕事をしてきましたが今回、海外で評価されたことで、そのことを改めて実感しました。
今後も国内外の仕事に広く携わり、デザインの力を社会に役立てたいと考えています。

ー 小玉さん、ありがとうございました!
インタビューを終えて、やはり本物の錦鯉の風格を表現するのは相当な苦労があったようですね。
同世代として、今後のご活躍にも期待しています。


小玉 文(コダマ アヤ)
株式会社BULLET代表、東京造形大学 非常勤講師
1983年大阪生まれ。
東京造形大学デザイン学科グラフィックデザイン専攻領域卒業。
株式会社粟辻デザインへの7年間の在籍を経て2013年、株式会社BULLETを設立。
H.P.:http://bullet-inc.jp/

酒のスペックは完全非公開!日本酒としての味へのこだわり

デザインが注目の「錦鯉」ですが、そのこだわりはもちろんデザインだけではありません。
1767年の創業以来培ってきた技術を詰め込んだ、今代司酒造が誇る自信作となっています。

そのこだわり故に、日本酒「錦鯉」は酒のスペックを非公開!
スペックとは大吟醸とか純米酒などという区分や精米度のこと。

今代司酒造はその理由として、頭で飲む人が増えてしまった現代へのアンチテーゼとしています。
情報で味を決めつけるのでなく、自分の舌で味わってほしいという願いが込めてあるのです。
これは何とも面白い試み。

 

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